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 コミュニィテスバスが 地 域 を 創 る 

   ― 横浜戸塚区小雀西地区の取組み ―
 「コミバスは万能ではありません。過大な期待をしてはいけない。地域に一番合ったものを、編み出していくことです」と交通ジャーナルリストの鈴木文彦さんは主張している。
 我が国のCO2の排出量の19.4%が運輸部門で、その内の48.9%が自家用車(2008年度:国土交通省資料から)。市民がCO2を削減するもっとも効果的な方法の一つは、自動車になるべき頼らないで、自転車や公共交通を利用促進することだ。その有効な手段のひとつがコミュニティバスである。
 しかし、単に補助金を多量に使い運行すべきだとは考えない。地域住民が地域で利用するという機運がなければ、ただ空気を運ぶことになりかねない。
 地域の市民、地域の企業、行政が一体となって、コミュニティバスを運行している横浜市戸塚区小雀西地区の取組地域を探ってみた。
                                      2011.3 写真・文 高橋
                                      (イラスト・図はパンフレットからの引用)

■ 「誰もが実現不可能と言う」中でスタート

 「当初、誰もが実現不可能、無駄な努力と半ば疑いの気持ちでスタートしましたが、多くの人達の協力を得て実現にいたりました。天の時、地の利、人の和に恵まれたと思っています」と横浜市戸塚区小雀町内会長の荻谷邦昭さん。

 20051120日、バス路線開設に向けて、町内会及び近隣の住民が80人で意見交換会を開催。その4年後200976日、定員13名の乗合バス「こすずめ号」の本格運行を実現させた。現在、運行費用の補助金は一切受けていない。

 小雀地区は横浜市の南西部に位置し鎌倉市と接いている。戸塚区の中で最少の人口密度で、65歳以上の人が24%の超高齢社会だ。山と谷に囲まれて、平坦地が少なく自然が残っている。大船駅から34キロ、バス停まで徒歩1520分という地区が多い。これから高齢社会になってもっと不便となるだろうと予想されていた。地元の大手バス会社に打診をしても採算性で困難と耳を貸してもらえない。そこで町内会が全面的にバックアップして、小雀町内会に事務局を設置し、小雀西地区交通対策委員会を立ち上げた。地元のタクシー会社である葛、同から2人、住民側9人、地域交通サポート事業担当の市職員6人からなる。毎月協議を重ね、2007年から3次の本活動時には定期的な会合を月2回行うようになった。

 20101026日、その3人の住民側委員に、当会会員5名が現地で話を聞いた。「最初は反対でした。でも途中から真剣になりました」と委員の一人。「うまくいく自信はなかったが、やれるところまでやろう」という合意ができたという。

■ 3者が得意分野で力を発揮、事業者が運行続行を勇断

 地域住民、行政、事業者がそれぞれの得意分野で活動を分担。住民は運行ルートを提案し、地元・地主の説明と承諾、町内会の「小雀だより」に掲載、チシラ・ポスターの配布、アンケートの配布と回収を担う。行政が役割も大きかった。市職員や交通計画コンサルタントの派遣、警察など他の行政に関わる届出、認可の調整や支援。更に、葛、同が認可を受ける事務の支援。実証運行の赤字補填など、本格運行まで欠かせなかった。葛、同は運行試験を重ね、運行ルートや停車場の提案、時刻表の設定など専門分野で活躍。

そうして2008105日から124日まで2ヶ月間の試験運行にこぎつけた。近隣自治会にも協力を要請し、チラシの配布、ポスター掲示、口コミ促進活動などで、10月の平日平均109人が12月には141人となって終了。試験運行後、葛、同の社長が「一旦中断してからの本格運行では頓挫してしまう。地域の役に立ちたい。多少の赤字は覚悟」と自主的に運行継続を勇断した。

それを知る地域住民は「タクシーを呼ぶなら共同さん」にしているそうだ。

■ 望むことを、皆で楽しく実現

そして、本格運行が実現に至った。運行時間は平日6時台から22時台の26便、土休日は9時台から20時台15便。運賃300円(未就学辞無料)。満車時の増発便の確保と定時運行の正確性で地元の信頼性を確保している。「この活動を通じて、住民が望むことを皆で動けば実現することを知った。喜びをみんなで体験できた」と、萩谷町内会長は強調した。                                       

   ↑小雀乗合バスのルート図(バンフレットより引用)。所要時間:大船駅から小雀西地区約20分
   「定員オーパの場合すぐ1〜2台目がお迎えにあがります! 安心してご利用ください」とパンフレットに明記されている。
大船バスターミナル専用停車場に待つ乗客、市の協力で本格運行後ようやく設置できた
2011年2月5日の横浜市・コミュニティバスに関するフォーラムで
説明する萩谷町内会長
 畑の前にある山谷上のバス停
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