トップ 公共交通シリーズ 第4段 「なぜ日本でLRDは成功しないのか
海外先進事例 米国ポートランドの都市交通政策
車 を 抑 制、ま ち を 活 性
公共交通を事業所などの税金で賄う仕組み
↑ 都心部を走るライトレールとバス(2010.4.小田部撮影)
↓ポートランドライトレールMAXの路線図とフリーレイルゾーン

アメリカ北西部に位置する人口57万人(都市圏人口220万人)のオレゴン州ポートランドは、公共交通を活用した都市計画の成功事例として世界中から注目されており、全米で住んでみたい都市、エコフレンドリーな都市のナンバーワンの座を常に獲得している。

ポートランド市と周辺の都市で構成する「メトロ」と呼ばれる独立した行政機関があり、この組織が、土地利用計画と地域公共交通政策を総合的に策定し管理している。メトロが管轄する地域では都市部と農村部を明確に区分(都市成長境界線)し、スプロール化を防ぐと同時に自然環境の保護と農業の維持発展に努めている。  

 早くも1970年代から歩行者中心のまちづくりを目指し、市内中心部を流れる川沿いの高速道路を撤去し歩行者・自転車用の道路や公園の整備を行い、また都心部のトランジットモール化や、駐車場スペースを人々が集まる広場に転換している。

またポートランドは自動車中心社会のアメリカに在りながら、公共交通の充実化と利用促進を積極的に図っており、バス路線の整備や郊外から街中に直接乗り入れてくるMAXと呼ばれるライトレールの拡充がなされている。利用促進策で最も特徴的なのが、都心地域ではMAXやストリートカーの運賃は無料(フリーレイルゾーン)で設定されており、車の利用を抑制する一方で人々が気軽に移動できまちが活性化されるようにとのねらいからである。

地域の公共交通を一元的に運営する機関(TRIMET)の財源は、運賃収入は約2割のみで、最も多くを占めているのが事業所などからの税金で賄われている。(左の運営財源図(TRIMET HPから)参照:)      

      ポートランドのバスやライトレールでは車イス使用の利用者を多く見かけるが、単独では乗合のバスなどを利用できない人々の移動手段としてリフトバスサービスが提供されている。前日の夕方までに申し込めば、早朝から深夜までいつでもドア・ツー・ドアで利用することができ、1回当たりの利用料金は通常の路線バスよりも安い$1.85 の設定となっている。財源等の問題はあるものの、利用者への負担をできるだけ抑えて高齢者や障がい者の外出を促す制度は、我が国の現状と大きくかけ離れておりうらやましい限りである。

                                          2011.3 小田部明人
☆参考資料 
■電車 MAX Light Rail (マックス・ライト・レール)
trimet.org/max/
午前4時30分から午前零時まで、5分から15分おきに運行。
自転車を乗せられるスペースのある車両には自転車の絵が表示されている。
ダウンタウン内の "Free Rail Zone" では、毎日無料で MAX Light Rail を利用できる。
赤:空港 -ダウン - タウン-ビ ー バートン
青:ヒルスボロ - ダウンタウン - グレシャム
黄:エキスポ - センター - ダウンタウン
緑:ダウンタウン - クラカマス 

(参考資料:ボートランドの生活ガイド

右写真:フリーレイルゾーンを走る新型MAX 、撮影 小田部
路面電車 Portland Streetcar (ポートランド・ストリートカー)
www.portlandstreetcar.org
路線地図: www.portlandstreetcar.org/map.php

運行時間:月〜金 5:30am-11:30pm; 土 7:15am-11:30pm; 日 7:15am-10:30pm
運賃:Zone 1& 2: 大人(18-64歳)$2.05 子供(7-17歳)$1.50 シニア(65歳以上) $1.00
年間パス:$100

※運賃は電車内の券売機で支払う
※TriMet の運賃と同じで、TriMet のパス・チケット・トランスファーも使用可
※Portland Aerial Tram のパスも使用可

左写真:地元ではPSU(Portland State University)の略称で呼ばれるポートランド州立大学構内を通る路面電車、撮影:小田部
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