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自 転 車 が 熱 い-  その2 欧州編
クルマより自転車優先の社会へ
Cyclists are going to transform the look and feel of our city.
(自転車乗りが街の景観と雰囲気を変える)
ドイツの格言:トラック一台分の薬より、一台の自転車
色文字をクリックすると関連のブログやホームページに飛びます。このサイトを私的に紹介したブログに意見や感想を募集中。
  『日本人にとって「自転車のイメージ」というものは、あくまでもお母さんたちが買い物に使うもの、乳幼児の送り迎えに使うもの、または中高生が通学に使うものだからだ。そういうところから醸し出されるフレンドリーで平和ないイメージ。それとは逆に駅前の「放置自転車」などは、まったく邪魔者として扱われている。・・・日本の「ママチャリに載っているだけでは、欧米各国がなぜ自転車に注目しているのかが真に理解できない。これは事実だ。自転車の可能性、将来性を考えるに当って、ママチャリだけをイメージしていると、本当の意味において納得することは難しいのだ』と疋田智氏はその著書『自転車ツーキニスト』のあとがきに記している。
 国土交通省は400mの自転車専用レーンを先行事例(国土交通省道路交通安全対策室資料「自転車通行環境整備モデル地区の取組状況」(PDF)より)として報告しているほど、日本では都市部の自転車専用レーンはまだめずらしい。(注1)しかし、海外では、ニューヨーク、パリ、ロンドンなどでは自転車通勤者が急増しており、自転車専用レーンの整備が進んでいる。自転車通勤者の推計が18万5000人のニューヨークでは過去3年間でレーンを倍増させ、計675キロと伸ばした。パリでも1995年に8キロだった自転車専用レーンは2007年までに400キロに増加している。
 これらは各国や各都市が法律や条例で国家戦略として自転車利用を促進してきたためだ。オランダでは1990年「自転車マスタープラン」を交通省が作成し、「2010年までに86年に比較して①自転車利用を30%、鉄道利用を15%増加」を目標値を定めた。アメリカ連邦交通省でも「自転車・歩行者研究者研究報告書」のアクションプラン1994で「自転車と歩行者の合計のトリップ割合数を倍増する(7.9%から15.8%に引き上げる)」と定めた。古倉宗治直著「自転車利用促進のためのソトフト施策」(2006年12月5日初版)による。
 ロンドンでは2009年度の市の自転車等予算を160億円を計上している。その様子を引用した。
 「日本は狭いから自転車のための道路を造るのは無理だ、と言われて来た。日本で紹介されるのは、広々とした自転車レーンをスポーツバイクが颯爽と走っているものが多く、それは無理と言いたくもなる。しかし、海外の都市部にも狭い道路はたくさんあって、狭い空間の中で自転車の場所をつくる工夫がなされている」「ドイツでは歩道に自転車レーンがつくられてきた。ただしあくまでもレーンなので一方通行であるし、歩行者が進入すると怒られるようなものである」と実際にドイツを視察した鈴木美緒・工学博士は『読む自転車 2009年11月号』の中で「自転車先進国の知恵、ドイツの交差点に学ぶ」と題して記している。
 「ヨーロッパの時に北東部、ドイツ、オランダ、デンマークなどで、自転車が大注目され、街作りの基本がクルマから自転車へと変っていき、自転車こそがエコロジーのための本命の一つとなっている」(疋田智氏) 
 中国、アメリカに次いで世界第3位の800万台の自転車を持ち、多くの国民が最も身近な移動手段として認識している国、日本。先進国として、地球温暖化防止のためにも今後の動向を期待したい。
 続編として、アメリカ編アジア編も編集中。

                                          2009.12.27  全面書き直し 文責:高橋
注1:都市部の自転車専用レーンは少ないが、大規模自転車道は3.592m(平成18年度)、135路線で進められている。
国土交通省の大規模自転車道より。参考資料:国土交通省 自転車活用のまちづくり。日本も努力はしているが・・・
リ市
 世界最大の自転車交通システム ― ヴェリブ ― 
    日本の“ママチャリ”がパリを変えた!?
 2007年7月15日、パリにヴェリブと名づけられたセルフサービスの世界最大の自転車交通システムが登場した。
 大手広告代理店JCドゥコーと契約してステーションなどに設置するパネルに広告を掲載させることで、税金の投入は一切ない。広告料は市の財源になるという。
 「ヴェリブ」とはフランス語で自転車をあらわす「ヴェロ」と自由をあらわす「リベリテ」を掛け合わせた造語だ。
 気鋭の若手デザイナー、パトリック・ジュニアン氏がデザインした自転車で、「トップチューブとダウンチューブが一本化されたスタイル。前カゴ付き。24インチ程度と主式ホイールサイズ。これは紛れもなき(日本の)「ママチャリです」」「実際にジュアン氏は日本のママチャリを“キュートでユニーク”なものであるとして、大いに参考にしたという話も聞くのですければ、これについては真偽のほどが定かではありません」と疋田智氏は『自転車の安全鉄則』の中で記している。
 300m以内にある1,451箇所の駐輪場から2万600台の自転車を借りることができる。30分まで無料。1時間、1ユーロ(約130円)、1時間半、3ユーロ、2時間7ユーロと長くなる程割高になる。旅行者などが使う1日限りバスが1ユーロ(約130円)だ。登録利用者は駐輪場から自転車を借りて、このシステムのあるどこの駐輪場にも乗り捨てることができる。すべてクレジット決済で、現金は使われない。

 その結果、ヴェリブは効果的な新しい公共交通システムとして、初年で2,500百万回利用された。その10%が車からの乗り換えだ。
 パリでは2001年には200kmの自転車ネットワークを作り、2007年には400kmまで拡大している。
 2008年7月15日、一周年を迎える。一年を通じて、世界上の都市がこの環境に優しい公共交通形態に注目を注いできた。
 
 利用者の一人は「自転車を利用すれば10分で着けるが、地下鉄だと30分はかかる」と便利さを語っている。
 この自転車シアリングプログラムによって、比較的低コストで公共交通選択を増やすと証明された。
 加入者は300万人。ヴェリブは10万kmの自動車運行を減らし、およそ10万ドルに相当する費用を削減をした。20万人のバリジャンが年間ヴェリブ利用に一人当たり50ドルを支払い、パリは1,000万ドルの収入を得た。経済を別にして、パリは非常に静かになり、この公共自転車システムによってきれいな空気の恩恵を得た。      
参考サイト
【動画】パリを回るなら自転車がおすすめ・・2007年6月14日 AFP
Steet Films ORG Vélib’by Elizabeth Press on (英語)
 ベロの動画参照(フランス語
●ヴェリブが成功した理由と課題
 疋田智氏は自著「自転車の安全鉄則」の中でヴェリベの成功の理由を次のように述べている。
 『1960年にアムステルダムが試し、以後、日本を含め、各地で死屍累々となってきた「共有自転車」というプロジェクトでしたが、しかし、今回「共有自転車」としては、今までと一線を画する上出来なプランとなっています。パリ市はこれまでの失敗例について、かなり研究したことがうかがえます。
 共有自転車がなぜ失敗するかというならば、簡単な話、結局、自転車がステーションに戻ってこないからです。駅の置き傘と同じ理由で、人間というものは匿名になると無責任になる。これは洋の東西を問わず変わりないのです』。ヴェリブを利用するには、「パスカード」が必要。これがクレジットカード決済で、現金はいっさい利かない。この自動課金システムが成功の秘訣だという。返却されなければ課金される、「Time is mony」となれば、可動もおのずと高まるというものだ。
 疋田氏は『結果として、環境面で、かなりの成功を収めたといえます。実際にパリを走る自動車がかなり減りました。「クルマから乗り換えることで初めてエコ」という自転車の特質を具象化することができたのです」しかしながら、その限界として「ヴェリブは歩行者の補助システムにしか過ぎない」という。
 『ベリブはクルマの代用にはなりえないし、自宅から会社までの「自転車通勤の促進」などについても、想定される利用の埒外です。「クルマの代用としての自転車」など、ハナから想定に入っていないのです。実際、フロンスの交通政策に詳しい首都大学東京の島海基樹准教授によると「ベリブは特にクルマの削減を目指した政策ではない』とのことでした。
 しかし、クレマを削減しないことには、パリ市が目指す「環境への貢献」も「渋滞の解決」も不可能なのです」と疋田氏は著書で訴えている。
●ヴェリブのその後
 「従来は収入(契約・利用料金)の12%がJCドゥコーの取り分で固定されており、爆発的な人気による余禄の恩恵はもっぱらパリ市が受けていましたが、今後、利用料金収入が14百万ユーロ(約19億円)〜17百万ユーロの3百万ユーロについては35%、17百万ユーロ(約23億円)を超えた部分については50%がJCドゥコーの取り分とするインセンティブを与え、サービス向上を促すこととなりました。さらにこれまで問題だった破壊車両が配置台数の4%を超えた場合最大25%まで1台あたり400ユーロ(約5万円)を市が負担することでJCドゥコーの負担が軽減されました。」
 *2009年11月23日に契約したと発表された。このシステムが始まって以来、6,100万人の利用、レンタル収入は1,400万ユーロ(約18億5千万円)と知らせている。原本はここを。
 *JCドゥコーはバリがこのシステムについて独占的に契約した会社
ロンドン市、
 自転車振興のために年間160億円の予算計上、市長自ら自転車通勤
 「最近のロンドンで凄まじく増加しているのが自転車通勤をする人の数なのです。ヨーロッパの国でありながら、これまでイギリスでは自転車はあまり人気がなく、大人で自転車に乗れない人が3割くらいいるのだとか。一説には、階級社会のため、自転車は貧しい階級の人々が仕方なく乗るものという偏見があったからと言われています」とイギリス在住の編集者青木陽子さんはご自身のブログの中で述べている。
 2009年11月13日に行われた自転車市民権セミナーの第6回にゲスト出演した青木陽子さんによると、2008年5月に当選したロンドンのボリス・ジョンソン市長(1964年生まれ、45歳)は、2005年5.5億円の自転車予算だった金額を2009年度に一挙に160億円に引きあけだ。自転車の交通量が2000年から2009年まで2.7倍、直近では毎年6~9%増加している。市長自ら自転車通勤をしているという。前市長が2010年までに市内に900kmのサイクルレーンを設ける計画をしていた。更に、その上の施策が実行されている。
 2009年8月から10月の間、毎週金曜日に、自転車通勤に慣れていない人のための大人のレッスンが行われた。市中郊外6ヶ所に朝8時に集合。金融街シティなどまでリーダが先導で実際に自転車通勤をした。リーダーはLCC(London Cycling Campain)というNGO。2009年の自転車トレーニング予算は4.5億円。
 「Cyclists are going to transform the look and feel of our city} (自転車乗りが街の景観と雰囲気を変える)が合言葉になっているようだ。

●参考ブログ ロンドンっ子が自転車に乗るワケ

 イギリスでは1996年に「国家自転車戦略」(National Cycling Strategy)を定めた。当時のイギリスの自転車利用率は前述のためか極めて低く、2%以下という低水準。この自転車トリップ数を2002年には国家戦略まで倍増させ、2012には4倍にすることを目標に「道路空間を自転車への再配分」が強調され、「都市地域全域にわたり道路網の現状を見直すとともに、自転車にやさしい環境のための実施計画を策定すること」とした。
 2002年4月、ロンドン交通庁と自転車団体のLCCが自転車専用のかなり詳細な地図を作成し、無料で配布した。地区ごとに分けてロンドンすべてをカバーする計19枚の地図とロンドン中心部のものがある。「クルマがあまり通らないか、通れない裏道や自転車専用道も含まれていて、自転車走行環境の確保に極めて有効に機能している」。2007年9月に14の新しいマップに作り変えらた。イギリス国内ならインターネットで申込むと無料で郵送してくれる。
(写真はLCCのロンドン自転車ルートマップ、詳細はLCCのホームページ参照)
☆オランダ・アムステルダム市、
  駐車場よりも自転車利用に投資自転車通勤に所得税控除
 『アムステルダム市の交通機関担当者は、自転車優先政策の基本的な考えをこう語る。
 「駐車場を造るより、自転車を利用したほうが良いと考えました。
 その投資先は、「駐輪場の確保」「安全で迅速な自転車道整備」「安全教育」となっている。この3点が、自動車から自転車に乗り換える最低条件だと考えているのだ』と水色の自転車の会は自著『自転車は街を救う―久留米市学生ボランティアによる共有自転車の試み―』の中で視察旅行の報告をしている。
 財団法人シマノ・サイクル開発センターのホームページには、世界を代表する自転車都市としてアムスデルダムを次のように紹介している。
 「人口ひとりあたりの自転車保有率世界一の国、オランダ-。干拓によって国土を拡大してきたオランダは、自転車乗車に適した平坦地が多い一方で地球温暖化による海面上昇などの環境悪化に敏感な国です。
 この国が自転車に注目をしはじめたのは1970年代。自動車の普及に伴う事故の増加やオイルショックがそのきっかけでした。地球環境問題への関心の高まりもあり、1990年以降、国の交通政策の中核に自転車が組み込まれています。
 政策のポイントは「自転車専用道の増加」「自転車利用者の安全性の向上」「公共交通と自転車との連携強化」「盗難予防」。1992年には、住民投票によって「市街地での自動車抑制」という方針も採択されています」


 1995年に従業員に通勤用の自転車を供与した雇用者に税金を控除する制度が導入され、その結果、5万台の自転車が新たに登録されたという。また、2001年1月から「週に3日以上、片道10Km以上を自転車通勤すると、所得税が年間約3万7千円控除される」という新税制も採用された。
 
 各自治体の自転車交通に対する取り組みについて協議する全国的組織「Bicycle Council(自転車協議会)」がある。また、各自治体の自転車政策の実施状況はNGO組織「Bicycle Union」がチェックを行なっている。
☆デンマーク・コペンハーゲン市
  自動車から自転車への転換を目指す

 気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)が開かれたデンマークの首都コペンハーゲン市は、市民の移動手段を自動車から自転車に転換させることを目指し「世界で最も自転車に優しい街」づくりを進めている。
 古倉宗治直著「自転車利用促進のためのソトフト施策」(2006年12月5日初版)によれば、「20012年までに、自転車通勤の割合を34%から40%に引き上げる」「5km以上の距離の自転車利用者のスピードを10%増加させる」などと地方レベルでの目標値を上げて自転車推進に取組んできた。

 日経エコノミー環境ニュース2009.年12月15日号によれば、「(コペンハーゲンは)通勤や通学する市民の55%が自転車を利用しており、約350キロに及ぶ自転車専用レーン設置を自転車普及の中心的政策に据える。

 自動車よりスピードが劣る点を補うため、自転車を優先した信号システムを一部で導入。時速約20キロで走り続ければ、交差点をタイミング良く青信号で直進できるように設定され、通勤時間の短縮が図れるという。
 専用レーンでひときわ目につくのが、カーゴバイク(=左写真=)と呼ばれる三輪車。前部の二輪の間に子ども用の座席があり、子どもが2人いる家庭の25%が保有する。

 同国最大手のカーゴバイク専門店を経営するラーセンさんによると、6、7年前から需要が急増。1台約2千ユーロ(約26万円)と高額だが、年間約1500台を売り上げ、近く米国にも製造・販売拠点を広げる」と報じられている。
 コペンハーゲンの自転車情報というブログには、次のように書かれている。
 「ここデンマークでは、よく言われている通り『「ここは中国?!』」ぐらいの勢いで自転車が街を滑走しています。
 平坦な土地柄が手伝って、車で移動するよりも自転車で移動した方が手っ取り早く便利なので、自転車は国民一人当たり一台、ほぼ普及しているのだとか。コペンハーゲン中心から各方面へ電車やバスを利用するよりは、自転車の方が早い時もあるぐらいです」
 その秘密は自転車道。歩道と車道に加えて自転車専用の自転車道が、市内はもちろん郊外に至るまでデンマーク全土で完璧に分けられているから。
 大きい道路でも自転車道がちゃんとあるため、バスやトラックがビュンビュン走るその横で自転車はこれまたものすごい勢いで風を切り、走り去っていきます。みんななんでそんな必死なの?というぐらい必死…どれくらい多いのかと言うと、こちらをご覧ください」。

*【カーゴバイク 26万円】 これって日本のリヤカーではないか。リヤカーは大正時代に日本で発明されたもの。戦前から戦後しばらくの間、リヤカーを引いた自転車が街中を行き来していた。昭和19年には、東京都下35区内に、自転車とリヤカーの修理をする共同作業所が約800個所もあったという。今、宅配便クロネコヤマトが自転車付リヤカーや新スリター・リヤカー付電動自転車(=右写真=)を使用している。佐川急便でも宅配専用自転車「エコチャリ」を独自に開発している。現在、リヤカーの値段はネットショップングだと3~4万円位。
*【通勤や通学する市民の55%が自転車を利用】 ブログにも記載したが、この数字だけで単純に日本と比較できない。地形や天候、職場と住居の距離、公共交通機関の発展なども加味する必要がある。
*右上の写真はStreet Fims ORG.の動画より(Creative Common)
*参照 THE COPHENHAGEN WHEEL PROJECT(英文)には動画付で紹介されている。
*【市民の半分以上が通勤・通学に自転車を使用】 日本と単純比較できないところがある。デンマークは標高が一番高くて147m。国土全体が平地なようなもので、寒冷地だが、降水量が少ない。
 しかし、「デンマークは通常2歳くらいから自転車に乗り始めるという。そして、14~5歳になると、お祝いに自転車が贈られるというくらい、自転車はデンマークの人びとにとっては、生活必需品だ。
 これだけではない。国の政策として、クルマの輸入を防ぐために、関税が200%かけれらていることも、自転車の普及を促進する大きな力となっている」。 横島庄治著『サイクルパワー ―自転車がもたらす快適な都市と生活―』より
*参考サイト:ヤモト運輸を救った日本最後の“リヤカー職人集団”注目殺到のリヤカーの技
☆ドイツ 自転車のまちミュンスター市
  自転車を町のシンボルに、城郭(直径5キロ)内、一般車両を進入禁止に
 ドイツでは自転車の普及を目指し、政府が2002年から10ヵ年の自転車利用推進計画を進めている。
 この計画では、自転車走行空間の整備、電車やバスと自転車との連携を可能にして移動時間を短縮すること、自転車利用者へのサービスを向上させることで、2012年には自転車利用率をオランダ並みの27%にまで高めることを目標としている。自転車通勤者の通勤費も税制控除の対象となった。
 この計画の第3章で政府は「地域内での機動性という点では、自転車はクルマの代替交通機関として大きな可能性を秘めており、短距離交通においてあらゆる用途に使用されることが可能である。自転車利用の割合が増加することで、気候変動の抑制、予防的な健康対策など、さらに大きい社会的な政策を達成する方法となりえる」と自転車を明確に位置づけている。
 
 人口28万のミュンスター市は自転車を町のシンボルマークにするまでに徹底して自転車に取組んでいる。
 「1980年台の当初、環境というより、:むしろ渋滞を解消するために自転車化を取り組みはじめました。そして直径5キロ程度の城郭(ミュンスターは中世からの城郭都市だったために、周囲をぐるりと城郭が取り囲んでいました)の中から一般のクルマを閉め出し、自転車と公共交通、そして運搬(時間を区切っての運用です)および障がい(注:原本は害)者のためのクルマ(ステッカーを貼って許可者を区別しました)しか走れなくしたのです」 疋田智著『自転車の安全鉄則』より
 写真はミュンスター中央駅前の地下の3,300台収納のドイツ最大の駐輪場(市のホームページから引用)。ここはガラス屋根でおおわれており、自然の光がさしこむので広場から自転車置場を見ることができる。機能的には、地上から直接駐輪場に降りられ、中には自転車の修理工場やレンタルサービス洗車機(洗自転車機)まである。自転車の具合が悪いときは、預けるときに依頼タグを挟んでおけば、帰りまでに格安で修理調整してくれるというサービス付だ。レンタルサイクル詳細は市のホームページ参照(英語版)
 ここは店舗施設を改装したもので、1999年に総額1,300万マルク(約8.5億円)をかけて完成させた。1日券0.7ユーロ、1ヶ月7ユーロ、1年間70ユーロ。(2009年12月10日現在、1ユーロ=約130円)
 村上淳氏の「欧州の先進自治体における駐輪場と自転車交通について―ドイツ・ミュンスター市の取組」(PDFファイル)には詳しい報告が書かれている。
☆ドイツ連邦政府・国家自転車利用推進計画(2002年~2012年) ― 利便性の創出、完成システムとしての自転車利用
 本文で紹介のこの推進計画について、石田久雄・古倉宗治・小林成基、共著「自転車 市民権宣言」から引用して補足したい。
 「連邦政府は、電車、路面電車、バス、自転車、徒歩などを効率的に接続することにより、実際の移動時間を短縮する『利便性の創出』を打ち出し、自家用車から公共交通機関(自転車も含む)への乗換えを推進する『city of short distances(移動が楽な街)』構想を提唱する」と述べている。
 この計画では「システムとしての自転車利用」という視点を重視していて、「『自転車利用』を考える際、単に人間が自転車に乗っているイメージを描くのでなく、路面電車、バス等と同等の一つの完成されたシステムとして位置づけることが重要である」と強調している点が特徴だ。
 この計画の目標を具体化するための主な施策は次の通りである。
①幹線道路に付帯した自転車専用道路建設・保守のための2002年予算は1億ユーロ(約137億円)で、前年度の倍増②自転車に関する道路交通規則など関連規則の改正③交通安全推進キャンペーン、道路利用者の環境整備④ドイツ内外の都市における自転車利用実態調査(2004年まで、予算は毎年100万ユーロ=約1億3700百万円)⑤゛国家自転車利用計画サイト」を設定、広く意見を聴衆⑥州政府、自治体が行う自転車インフラの整備・保守に対し、「地方公共団体交通融資制度」(融資総額16億8千万ユーロ=約2,302億円)の活用推奨― など。 
(CC) 川崎の交通とまちづくりを考える会 Some Rights Reserved. 自転車が熱い米国編へ サイトマップ