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2011地域公共交通フォーラム
横 浜 の コ ミ ュ ニ テ ィ バ ス を 考 え る 会

コミュニティバスに関するフォーラム報告

 2月5日、コミュニティバスをテーマとした公共交通フォーラムが横浜で開催され、各地域でこの問題に取り組んでいる方など約80名が参加し、各地の現状や課題などが語られた。

 横浜市は比較的公共交通に恵まれていると言われているが、川崎北部地域と同様に丘陵地が多く交通不便地域も各所にあり、高齢化の進行に伴って身近な足の確保を求める声が上がっており、今回のフォーラムは都市部におけるコミュニティバス問題が取り上げられた。

 基調講演はコミュニティバスの第一人者と言われている交通ジャーナリストの鈴木文彦氏。地域全体の公共交通ネットワークを組立てる中で、コミュニティバスをどう位置付け、活かしていくかを考えることが大切で、丹念なニーズ調査と導入目的をしっかり構築することが欠かせないとの話があった。中でも最も重要なのは、「持続できる交通」の仕組みを築くことで、そのためにはその地域の最適形態を探り、行政、市民、事業者の役割と責任を明確にし、みんなが当事者になって地域の交通を育てる意識を持つことが大事であるとの指摘があった。

事例報告は3地区からで、最初の「こすずめ号」は、JR大船駅から戸塚区小雀西地区を結ぶワンボックスタイプ(13人乗り)の車両により、試験運行を経て平成21年7月から本格運行が開始された。開始までには町内会を中心に会合を重ね実現に結び付けたが、活動を通じて町内会への信頼が向上し、町内および近隣地域との繋がりが深まったとのことである。         

2番目は、泉区下和泉地区の「Eバス」で、この地区は平成11年の市営地下鉄延伸に伴うバス路線再編により、周辺のバスの便数が大幅に削減された。また地域の高齢化(現在の高齢化率32%)が進む中で、平成14年から自治会の自主運営により運行されている。

運行形態は貸切バスを利用した会員制で、予め会費を納めた者のみが乗れる仕組み。各便にはボランティアによる添乗員が同乗し、会員券の確認や乗客のケアを行っている。運行後の成果として、住民が外出する機会が増え、また自治会への協力度が高まったことが報告された。

最後の事例報告は、試運行段階である港北区錦が丘地区の「菊名おでかけバス」で、過去7年5回に渡る試運行の経過と、今年1月から開始された6回目の試運行計画の説明があった。先の2地区と異なり、市街地で比較的鉄道駅にも近く恵まれた地区ではあるが、坂の多い地域で、高齢化に伴いニーズはあるとの。今回の試運行形態は、週1日4便を1年間に渡り行う予定で、こちらも会員制でお年寄りの買い物支援が主目的となっている。

3事例とも地域住民主導の運行であるが、行政サイド(道路局)は財政支援を一切行わず、運行開始前の調査費や実証運行経費の一部を負担するのみで、本運行はあくまで地域の責任でとのスタンスで、年間予算は人口368万人に対しわずかに1500万円である。従って今後いかにして安定的に収入を確保して運行を維持していくかが恒常的な課題である。

フォーラムの最後は、鈴木氏と各地からの報告者およびコーディネーター役の主催者代表による“コミュニティバスがコミュニティをつくる”と題したパネルディスカッションが行われ、導入にあたり最も苦労した点などが語られた。鈴木氏からは、成功させるには地域住民の強い意志と頑張りが不可欠だが、今回の3地区はその点が上手くいった要因の一つであるとのコメントがあり、また今後は後継者づくりが求められるとの指摘があった。
                                          2011.3 小田部明人
☆参考サイト
● コミュニティバスが地域を作る 横浜市戸塚区小雀西地区の取組・・・・当サイ
● 横浜市泉区の下和泉住宅自治会が自主運営によるコミュニティバス「Eバス
」・・・「財団法人あしたの日本を創る会」発行「まちむら」103号の紹介記事
● 横浜 港北南部コミュニティバス実現をめざす市民の会のブログ
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