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コミュニティバスシリーズ 第10段  「有馬・東有馬コミニティバス運行実験」へ
第2回川崎市コミュニティバス連絡会
地域の交通を守るには、地域ぐるみで取り組むこと
「なぜコミバスがこの地域に必要か」地域の議論と実績で、行政に働きかけよう

 2011年12月23日、高津市民館にて第2回川崎市コミュニティバス連絡会を行った。

 「川崎の交通とまちづくりを考える会」が「持続可能な地域交通を考える会」の協力でコミュニティバス支援活動を開始して2年。ようやく形あるものになりつつある。
 今回は7月に続き2度目。川崎市各地でコミュニティバスに取組まれている皆さんの意見交換、共通の課題解決に向けて、市内の3団体、東京都小平市の団体、合計4つのコミニティバスに関わる団体が参加し、活動報告を行った。
 
 オブサーバーとして交通ジャーナリストの鈴木文彦さんと東京都都市大学の学生2名が加わった。

 北は岩手から西は山口までコミュニティバスの取組みにアドバイザーとして携わってきた鈴木文彦さんは、4団体の発表後、次のように語った。

地域ぐるみの取組みが地域の交通を守る 

 今、コミュニティバスと言われるものが見直しの時期に来ている。児井さんから話があったように、地方のバス・鉄道も同様で、未来永劫続けられるのかは厳しい状況だ。
 大都市圏でも、地方の交通を守るには地域ぐるみで取り組んでいかないと、今後はバス路線の縮小・撤退が出てくるだろう。普通のバス路線でもバス会社が運行している(から地域は何もしない)では続かない。行政の財政悪化で終わってしまうこともあり得る。誰がどこまでどういう役割分担をするべきか、という議論は今後きちっとしていく必要がある。

 小平市では、完全に出来ているとは言い難いが、行政はどこまでやる、住民はどういう役割をする、事業者は何をする、という話をこれまでもしてきた。今までのようにただ赤字分に補助金を投入し、行政が丸抱えして一部地域に走らせるのではなく、行政が全体のネットワークを考える部分と、具体的に困っている所をどうするかの部分、その両方を両輪で議論していく必要がある。

■ 「なぜコミバスがこの地域に必要か」地域の実績と議論で、行政を啓蒙

 (今回4団体の)皆さんが取り組まれていることは高く評価される事だろう。これを実績として、検証もしながら、行政を動かしていくことも必要だ。地域から行政を啓蒙していく必要もあると思う。
 行政は担当者が変わる。また、常に意識が高い人がいるとは限らない。これまでも、せっかく行政の担当者が交通の考え方や役割分担に一定の理解が得られた所で、大半の担当者が変わってしまうような経験をしてきた。行政を啓蒙していくためには、地域の中で議論をし、実績を見せていく必要があるだろう。
 地域で動くことが必要な理由は、本当の必要性が分かっているのが地域だからだ。なぜコミバスがこの地域に必要かの裏付けは、地域できっちり議論していくことで明らかになると思う。

■ どうするか知恵を出すのは地元

 地図で見ても分からないが、川崎市は坂道が大い。その坂道の道路条件はよくない。市バス、東急バス、小田急バス、臨港バスは平坦地が主だが、いずれも朝夕の通勤需要に応えるために、川崎市では大型バス中心にせざるを得ない。技術的に条件の悪くなる丘陵部をどうするか、知恵を出していくしかない。その知恵を出すのは地元だ。

 その動きの中で、行政にも本気になってもらい、川崎では行政ももう少し研究が必要だと思っている。川崎市では交通局の事業委託に関する委員をやっているが、川崎市域全体のネットワークをどうしていきたいか、市の考え方はあまり見えてこない。川崎市特有の課題も幾つかある。鉄道交通の結節など、ほとんど事業者任せにしかしてきていない。そういう全体像の中で、本当に必要な所にコミュニティ交通を組み合わせていくための論理を求めていく必要があると感じている。

 そういうのが無いと、結局、実験をして本格運行という道筋は付いているが、その時の判断基準として採算だけになってしまうおそれがある。採算も大事だが、採算確保に当たって誰がどれだけ責任を負うかの議論をしておく必要がある。

 もうひとつ、実績を作っていくことが必要で、今回の長尾台では、ここにこういうものが必要だと言う所から攻めていって実績を作ったのは大きいだろう。採算も考えながら、なぜ必要か、どういうものが必要かの議論を、続けていく必要があると思う。

■ コミニティバス協議団体同士の連絡会は全国的にもほとんどない

 「地域の中でこうした(コミュニティバス)連絡会をやっているケースはほとんどない。川崎以外は山口で行っている位だ。情報交換は大切な事で、担当者も勇気づけられる。貴重な機会だと思う。ただ、あまり固い会議にしても疲れるので、時には懇親会にするなどの工夫があると良い。本当は市などを巻き込んで出来ればいい。イベント的な公共交通フェアのような企画をするとか、楽しんで出来る工夫があると良いのではないだろう」と最後に連絡会の取組についてアドバイスをいただいた。

各団体の発表の一部を紹介する。
*ブログでも紹介中、皆様のご意見やご感想をお待ちしております。
 コミ二ティバスシリーズ10編、ここから続けてご覧いただけます。
■ 長尾台のコミニティバス運行実験報告(2011年11月10月〜12月9日) 
   ― 地域の定住性向上に向けて共通意識が芽生える ―


 川崎市長尾台コミュニティ交通導入推進協議会会長の児井正臣さんは次のように報告した。
 コミュニティバス実現のために、@.地域にコミュニティバスを走らせる客観的・合理的理由を探る。A地域の既存公共交通ネットワーク体系を崩さない。 B技術面・経済面で持続可能とする。この3条件を協議会の憲法のようなものとして掲げた。

 当初Bの技術・経済面だけ考えてきたが、税金で支援いただくにあたり@の「客観的・合理的理由を探る」.が必要、また場所によっては既存交通事業者との潰し合いが起きているとの事でAの「既存の交通交通体系を崩さない」.に配慮。@は地域特性(高低差)、特異な年齢構成で説明がつく。Aは地域公共交通会議分科会での宿題、Bも含めて確認するために実験を行った。
 
 その結果、 初日は1日159人。最終日は361人。目標値の1便あたり4人に対し、後半は3人を越え、最終日には4.2人になった。期間中、「乗っていただかないとこのプロジェクトは頓挫します」と住民に周知して、グラフを毎日更新して車内に貼るなど住民にPRした。 アンケート調査 では、このバスが無かった時にどのように外出したかを聞いた。 路線バスは24%(59人)。1日59人がコミュニティバスに乗ったことで既存のバスに乗らなかったという数字がでている。

 まとめると、これからのコミュニティバス運行は、本当に必要とし、自治体補助無しで持続的運行が可能な地域に(限定される)だろう。しかし(コミュニティバスが)自治体補助無しで走る地域があるかどうかは疑問だ。過疎化・限界集落は地方の問題ではない。首都圏でも必ず起きるだろう。
 長尾台でも人口が減っている。それを止めるため、地域の定住性を高める取り組みを考えるべきだ。そのために、バスやインフラの維持、更に地域住民の意識の共有が必要だ。
 今回運行実験が出来たことで、地域住民の意識の共有)の兆しができたと思う。
  次は試行運行に進みたい。川崎市も来年度やってもいいという意向のようだ。時期は分らないが、試行運行の時期が遅いと機運が冷めてしまう。あじさい寺に訪れる人が増える6月や、夏の暑い時にぶつけたい。
  もうひとつは車両サイズが問題だ。乗り残しや、車両が小さいから心配で乗れないという声もあった。大型化は、警察などとの調整が必要で大きな課題だ。  
■ 高石地区の山ゆり号のの報告  走らせることが継続のカギ

 9月1日、川崎市初のコミュニティバス運行が多摩区高石地区で実現した。麻生区コミュニティーバス協議会会長の碓井勝次さんは「本格運行するまで4回試験運行をして11年かかった。試験運行でもなんでもいいから続けて早く走らせないと、時間が経つうちに住民の気持ちが離れていまう」と強調した。
 本格運行では1日100人が採算ラインだが、「今のところ85〜6人。9月10月はもっと乗って、90人位。11月に減った。12月はいい調子。暮れと正月で山ゆり号に乗る癖をつけてもらえば、乗ってもらえると期待している。近い将来は100人になるだろう」と報告された。
 2月に1日13本から15本にダイヤを変更する。 
■ 宮前区の運行実験計画 悪条件でも「だめでもいいから走らせよう」で合意

 有馬・東有馬地区コミュニティバス導入協議会の運行実験について報告がされた。宮前区まちづくり協議会交通専門部会長の藤田信吾さんは次のように述べている。来年度初めに運行実験が2009年1月と同じ路線延長8.8kmで車両も同じ中型バス(2.3×9m、52名乗り)で行われる予定。今回で2度目。具体的な日程は決まっているが、まだ発表しないことになっている。
 運行実験については「地元でも意見が割れた。そんなのやってもしょうがない、という声も聞かれた。だめでもいいから走らせようと決めた」という。
 採算性向上のため、バスは1台で、前回とは異なり土・日休業。運行時間は始発を1時間早め、7時から17時。運賃200円、高齢者100円。1日8循環、実質1時間に1本。「時間延長も希望したが、朝のみの対応しかできなかった。前回に比べて、地元希望のルートが大幅に短縮された。今回は前回と同じルートで、更に運行間隔など悪条件になる」。
■ 東京都小平市のコミバス  現場のお母さん達の住民運動

 「会の中心的なメンバーは、お母さん方。私は代表と言っているが、ちょっこと乗っているだけだ」というのは、今回オブザーバー参加の「小川・栄コミュニティバスを走らせる会」(東京都小平市)の代表の渡辺進さんだ。
 具体的な活動例として、地域の住民全体に情報を出すために「コミタク便り」という会報を発行して7、800部配ったり、フリーマーケットに出展してコミバスを宣伝したりする=右写真=などの活動が紹介された。
 また、小平市の取組として行政と住民の間をつなぐ「コミバスを考える会」(自治会・商店街などの15団体で構成、「小川・栄コミュニティバスを走らせる会」もその1団体)に触れ、「平均月1回開催しているが、皆さんあまり発言しない。地元のお母さん方が傍聴に来てくれるので、それに勇気をもらって私が一生懸命話すことができる」と語る。
 「現場の声を行政に伝えるのが私達の会の役目だ。私達がコミバスの運行ルートや間隔を考えて要望を市に出す。行政は最初は対立的だったが、討論を続ける中、熱心に聞いてくれるようになった」。
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