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   走れ、走れ! 山ゆり号


       ― 本格運行への4度目の挑戦、
               広がるサポートの輪 ―
「自らの足を自らの力で」との川崎市の施策に夢を!・・・プログにご意見、ご感想を
■ クルマがなければ生きていけない地域

 「どうしてバスに乗らないのかと言われるけれど、ここではクルマがなければ生きていけない」と地元生まれの笠原登さん(73)は語る。この自動車ばかりが目につく、自転車やバイクがほとんど見られない多摩丘陵地帯に、コミュニティバスの本格運行に向けて挑戦しているグループがいる。

 去る2010年6月1日、川崎市麻生区高石地区にて3ヶ月間のコミュニティバスの試行運行が始まった。

 開発されるまで、この丘陵地帯の高石地区にはほとんど住民は住んでおらず、当り一面が雑木林で、谷間には湧き水が流れ、蛍が飛び交う自然豊かな地域だったという。1950年後半から切り売り状態で開発が進み、急な坂が多く道幅が狭いため、路線バスは運行できない。

 「市町村が主体的に運行するバスのことで、高齢者や障がい者の生活交通確保や、公共施設への移動手段確保などを運行目的とすることが多く、一般に運行費の一部もしくは全部に税金が投入されている。したがって、利用者が十分見込まれ黒字経営となるような地域での運行ではなく、・・利用者が多く見込めない地域において、住民の生活交通確保のために運行される」『成功するコミュニテイバス』というコミュニティバスの定義に、“山ゆり号”=左写真=はぴったり合致する。ここは市内初のコミュニティバスの本格運行をする最適な地域のひとつだ。

 2004年、こうした交通不便地域の解消を目指し、住民が麻生区コミュニティバス協議会を立ち上げた。しかし、過去2007年から1度の運行実験と2度の試行運行を、市の協力で実現したが、本格運行に至らなかった。2006年の運行実験 2007年2月13日〜3月14日、第1回目の試行運行は2007年2月13日〜3月14日、第2回目は07年12月1日〜2008年2月29日までのそれぞれ30日間。採算ベースに合わないという理由から進展しなかった。(この他にも、2004年1月15日から2月13日までの30日間、まちづくり局主導で、百合ヶ丘駅を起終点に5.7qを40分間隔で多摩区南生田を循環する運行実験を実施している)
 
■ サポート割引登録に希望を託す

 「今回3度目の試行運行で、何とか本格運行につなげ成功させたい」と麻生に生まれ育った碓井勝次会長(83)は訴えている。

 本格運行への鍵は採算性。市側は「出来る限りの支援をして行きたい」と述べる一方、「自らの足を自らの力で」という方針で採算性重視の姿勢を崩さない。前回2007年12月から3ヶ月間、6人乗りタクシー2台を使って月140万円の収入を見込んだが、3ヶ月で経費約420万円に対し約211万円の赤字となった。
 「このため、利用者アンケートなどから課題を洗い出し、(1)平日のみの運行(2)ルートの見直し(3)タクシーの大型化により台数を減らして人件費を抑える―などとして、採算性を考慮。さらに、本格運行をにらみ、茨城県日立市の例を参考にしてサポーター割引制度を導入することにした」(2010年5月18日付「神奈川新聞」)。それによって、約6割強減の月額約60万円を経費として見込んでいる。

 車両は「安全にまちに出られるように車両のバリアフリー化、オートドア、電動補助ステップ」付。400万円台相当の新車購入費用と計20ヶ所の本格的なバス停表示版はすべて市が用意した。(しかし、試行後、バスは売却、バス停表示は保管される計画) 前回に引継ぎ運行事業者は地元のタンシー会社のコスモ交通。5月12日付で国土交通省関東運輸局長から道路運送法21条に基づき道路乗合旅客運送の許可を取得している。
 基本料金は大人300円、子供100円。70歳以上や障がい者は200円。サポータ会員に登録すると、運賃が50円安くなり、70歳以上の登録者は150円引きとなる。採算性を考慮することもあるが、「できるだけ多くの方がサポータ登録して頂くことにより、本格運行が身近なものになってきます」という狙いもあるようだ。本格運行まで登録料無料。本格運行後に年間6,000円(月額500円)支払うことになる。すでに124人が登録している(5月現在)。1,200人の会員を集めれば月60万円となり、無料運行も夢ではない。

■ 「5年先が心配」と高石団地のおばあさん達、語る。

 山ゆり号は平日の午前9時から午後6時の時間帯で約30分間隔で12便運行している。高石団地から生田病院を経て、百合ヶ丘駅まで往復の片道約3キロ。バス停は20ヶ所。午後の一部の便は百合ヶ丘駅から先のスーパーを回る。

 このメインルートにある市営高石団地は全部で238戸。百合ヶ丘駅まで徒歩15分程度。だが、右写真の約230段の急階段を登り降りしなければならない。
 手すりをつかむ姿や途中で立ち止まるお年寄りの姿が見られた。団地近くには酒屋が1件あるだけで、他には店はない。酒屋に高めの野菜が売られている程だ。
 「今日、バスが運行しているのは知っているわ。でも、天気もいいので歩けるうちはこの階段で使って買い物に行きます。でもねえ、5年先を考えると、階段を登る降りできるかしら。特に降りるのが辛い」とこの坂道を登ってきた高石団地の住民のおばあさん達が話をしてくれた。

 買い物難民をテーマに取材に来ていた大阪・読売テレビもこの坂を撮影していた。

 高石4,5,6丁目地区は7592人(男3667、女3925)が住み、高齢化率19.1%(2010年3月末)と市の市平均16.5%よりやや高い。 

 「地域のみんさんによる、みなさんのための交通手段です。試行運行のなかで、みんさなの要望を大切にしながら改善を図ってまいります。
 是非、みなさんの暖かいご支援とご理解で乗り合いタクシー“山ゆり号”を育てていただきたいと思います」。

 平成22年5月吉日 麻生区コミュニティーバス協議会会 会長 碓井勝次
  (麻生区コミュニティーバス協議会からのお願いのパンフレットより)


                2010.6.7 文責・写真: 高橋
4度目の運行に向けて、出陣式は盛大に行われたが・・・
買い物難民をテーマに取材中の大阪読売テレビ 高石6丁目の停留所、停留所は合計20ヶ所
 8人乗りの山ゆり号内部 高齢者が目立つ高石団地前を通過する山ゆり号
 坂道を登る山ゆり号 大駐車場の前にぼつりと見える高石5丁目のバス停
 
☆関連サイト
麻生区コミュニティバス「山ゆり号」2010年度試行運行視察報告・・・姉妹団体「持続可能な地域交通を考える会 」の報告
川崎市まちづくり局交通政策室(地域交通対策担当)の「麻生区高石地区における乗合タクシー(山ゆり号)の試行運行について
☆マスコミ報道
坂道多い高石地区の住民らが乗り合いタクシー試行運行、高齢者も安心して買い物に/川崎・2010年5月18日付神奈川新聞
期待も乗せて試行運行発進 麻生区高石地区のコミュニティーバス・・・・2010年6月2日付「東京新聞」
もう一つのコミュニティバス、デマンド交通システム
奥山修司著『おばあちゃんにやさしいデマンド交通システム』の紹介

『こうした仕組みをなぜ創り出せたのか。答えは簡単で、門外漢だから、交通事業者やシステム事業者の「できない理由」に耳を傾けないで、利用者である高齢者を中心とする需要サイドから最適な移動サービスは何かを純粋に追及できたからだと思っています』と著者が本書の中で語っている。

 この新しい交通システムはすでに1334の旧市町村(現、自治体数で32)地域で導入され、「全国デマンド交通システム導入機連絡協議会」(HP:http://www.demand-kyougikai.jp/)が結成された。

 これはITを活用した乗合タクシーで、従来のバスとタクシーの利点を兼ね備えた公共交通サービスだ。電話予約(デマンド)で、登録すれば誰でもが移動できるという交通機関。発祥地の地・福島県旧小高町では、『安くて便利で楽しく生きがいを運ぶ宝船』となった。街中の移動では100円で戸口から戸口へと送迎してくれる。郊外の自宅から街中へは1300円。「今では一部地域の園児と小学校低学年の送迎を含めて1日平均120人以上、年間3万人程度が利用する地域にとって欠かせない交通システムになっている」という。

本書では豊富な図解や表で具体的な収支状況も含め、成功までたどり着いた経緯を詳細に紹介している。

 自家用車の台数が世帯数どころか住民人口を上回る地域も存在する今日、『ほとんどの住民が路線バス等を利用していない現状をデータで示した上で、真に公共交通を必要としている、いわゆる「交通弱者」にとって「臨まれる交通とはどのような移動サービスなのか」を問いかけることからスタートすることにしています』と著者は訴える。

 このシステムは、 住民・行政・事業所の「三方一両得」が成立する、商工会議所、地域商店街、既存のタクシー会社を巻き込む市民運動にも似た取組だ。すでに人口10万人規模の地方都市でも導入されている。本書はコミュニティバス導入を模索する地域の人びとに「少子高齢社会における地域活性化に取組む上での実践的なケーススタデイとして」格好な教科書となろう。

 このデマンド交通システムについては、国土交通省のホームページにある「地域公共交通に関する新技術・システムの導入促進に関する調査」が詳しい。「地域公共交通に関する新技術・システムの導入促進に関する調査業務」(PDFファイル)には70頁に亘って図解入りで収支を含む実例が紹介されている。
公共の交通への緊急アピールNGO共同声明
平成21年12月4日 全国路面電車ネットワーク
■新政権ができて2カ月余り、我々も切望していた国民の移動の権利を明記した「交通基本法」制定の動きや地球温暖化対策の大胆な数値目標の設定など、公共交通を福祉の一部と考える発想が出てきたとも思えます。
■しかし一方で、高速道路の無料化やガソリンの暫定税率の撤廃によって、地方の公共交通は大打撃を受けることが確実になってきました。(料金1000円でも影響多大)
■さらに今回の事業仕分では、情報公開等の手法は一定の評価ができるものの、地方の公共交通については拙速な検討になっており、やっと存続している地方の公共交通を存続困難に追い込むものです。
■これからは電車バスなどの「公共交通」を論じるだけでなく、自動車や道路、自転車を含めた「公共の交通」を論じることが必要です。そこで我々はこの際、交通基本法制定と様々な対策をセットで導入し、真に人と環境にやさしい交通の実現を要望したいと思います。

なお、この要請は以下の理由によります。

1.日本で発生する温暖化ガスの25%の削減のための公共交通の拡充には、個別事業の独立採算の範囲を超えて、国と地方が一体となって取り組む必要があり、このためには国民の移動の権利を明記した「交通基本法」の制定が不可欠であること。

2.日常生活を送るうえで高齢者でも自家用乗用車に頼らざるを得ない人、自動車の運転ができず公共交通が必要な層が拡大しています。ライフラインとしての住民の足の確保が死活問題であり、地域の全交通事業者が参加する公共交通連合を構築して、公的資金による体系的な交通のシステム造りが必要であること。

3.現在民主党がマニュフェストで掲げている高速道路無料化は、公共交通そのものの衰退を招くとの危惧を持つ人が多いことも事実です。「交通基本法」との関係では、高速道路料金をロードプライシングのツールとして使って交通インフラを整備するという方法がベターではないかと考えます。

4.公共交通政策と道路政策、自動車政策をセットで行える「公共の交通」政策ミックスの確立と財源の確保(交通関連、福祉関連財源の再配分や環境対策との融合など)が必要であること。公共交通の利用促進と土地利用の集約化によって、渋滞削減や地方財政の効率化、環境負荷の削減を図ります。

我々は「人と環境にやさしい社会」の実現に向けて、地方自治体および国の政策に対して積極的に議論に参加し、情報発信や公共交通の利用促進に努めていきます。
                          「ゆうなぎ鉄道社長」のページより                          
☆国土交通省     「交通基本法の制定と関連施策の充実に向けて  

               ―中間整理―〜人々が交わり、心の通う社会をめざして〜
」(PDF)抜粋。
 「将来を見据え、人口減少・少子高齢化の進展、地球温暖化対策等の諸課題に対応するためには、交通政策全般にかかわる課題、交通体系のあるべき姿、交通に関する基本的な法制度や支援措置のあり方などについて、積極的に検討を行っていくことが必要だと考えています」。

 「くるまを使える者と使えない者の間に大きな格差ができてしまいました。このような「交通の格差社会」の進展は、これからのわが国に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。今、日本人の5人に1人は65歳以上の高齢者ですが、5年後には4人に1人、25年後には3人に1人を超えると見込まれています。このままでは多くの方々が社会参加の機会を制約され、活力のない暗い社会に向かってしまうのではないでしょうか。
 交通基本法を制定しなければならないと思うもう一つの理由は地球環境の問題です。地球温暖化の最大の原因は大気中に放出されるCO2 ですが、日本では交通部門からのCO2 排出量は全体の約2割で、その90%はくるまからのものです。交通手段をくるまから環境にやさしい公共交通機関に転換するとともに、くるま自体をエコにしていかなければ、鳩山政権がかかげる2020年までに25%のCO2 排出量の削減という目標の達成は難しいと思います。

 そのためには、私たちの暮らすまちを、自転車、バス、路面電車、鉄道などが充実した「歩いて暮らせるまち」にしていかなければなりません。低炭素社会の実現はグリーン・イノベーションによる成長戦略の道につながりますので、交通基本法のなかにきちっと交通分野の地球温暖対策を位置づける必要があります」
☆川崎市の見解 2009年9月15日川崎市議会定例会議議事録より
○まちづくり局長 飛彈良一
 次に、コミュニティ交通についての御質問でございますが、乗り合いタクシー「山ゆり号」につきましては、平成19年度に実施した試行運行の結果やアンケート結果を踏まえ、地元協議会が主体となって改善策の検討を行っているところでございます。その中で持続可能な本格運行を目指して、さらなる採算性の向上を図るため、山ゆり号の運行に賛同いただける方々に年間登録料6,000円、1カ月に換算いたしますと500円を支払っていただくと、1回の乗車につき50円の割引を行うサポーター割引制度を導入することとし、地元協議会が主体となり、地域の皆様へ協力を働きかけているところでございます。さらに、個人、企業等からの協賛金、広告料等による事業収入の確保にも努め、再度の試行運行の実施を目指しているところでございます。
 次に、高齢者や障害者等に対する割引制度につきましては、山ゆり号は交通事業者としてタクシー事業者を考えていることから、路線バスの割引制度をそのまま取り入れることへの課題もございますが、他の地区での取り組みも踏まえた対応が必要と考えているところでございます。
 次に、市内各地での取り組みについてでございますが、まず、有馬・東有馬地区につきましては、ことし3月に行った運行実験の結果を踏まえ、事業収支の改善計画案の検討等を行っております。次に、白幡台地区につきましては、平成18年度に勉強会が設立され、運行ルートの検討等を行っております。次に、長尾台地区につきましては、平成20年度に協議会が設立され、その後、アンケート調査などを行うとともに、運行計画の検討等を行っております。次に、月見台地区につきましては、平成18年度に勉強会が設立されましたが、その後、検討区域を1つの自治会から4つの自治会に拡大し、運行ルートのその後、検討区域を1つの自治会から4つの自治会に拡大し、運行ルートの検討等を行っております。次に、蟹ヶ谷地区につきましては、平成17年度に勉強会が設立され、バス事業者と既存路線の延伸等について調整を行っております。次に、久地地区につきましては、平成18年度に協議会が設立され、朝晩の時間帯に既存路線バスの一部区間の増便を昨年7月に開始し、一定の成果が得られたところでございます。
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