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走れ、走れ! 山ゆり号PARTU 
  徐々に浸透 乗合タクシー山ゆり号

  ― 運賃でコストをまかなう“運賃原価主義”を克服できるか? ― 
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 試行運行を後5日を残す8月27日、麻生区高石地区を再び訪れた。

 「速報・速報!! 
  《「山ゆり号」》

 サポーター割引の登録者 ―目標250名
 7月28日現在204名
 1日の利用者も100人を越すようになりました。
 あと1カ月、本格運行に向け頑張りましょう」
と車中に掲げられ、山ゆり号の新聞記事が多数置かれている。

 多くの人が口々に「ありがとう」と言って降りる。おばさんが乗り込む時、「どうぞ」と2本の栄養ドリンクを運転者と記録係りに差し入れをしていた。夕方だったせいか2周廻ってみたが、2度も満車となり乗れない方々も見受けられた。
 左写真にも見られるように車体にも広告が張られてい.る。
 「よく乗られるのですか?」と質問すると、「なくなってしまうと大変ですわ。本格運行が決まっても、再会するのは半年はかかるそう」と返答。でも、サポート会員を見せてもらったら、番号は180番台で、7月にサポート会員になったという。

 推定運行経費が月額約63万円。一日100円として100人の乗車なら可動日数22日で、100円×300円×22=66万円といけそうであるが、割引もあるので難しい。全般の成績をどう評価するか。川崎市の評価が難しいだろう。運賃でコストをまかなう“運賃原価主義”にはどうしても無理ある。

 2010年8月23日「神奈川新聞」の「試行終盤、運行へ正念場 乗合タンシー川崎市麻生区」の記事によると、市交通施策室は「市の財政状況によって補助打ち切りというケースもあり得るので、望ましいのは自立した安定的な運営。本格運行に向けて、収支が安定するためのアイデアを住民と一緒に考えていきたい」と話している。

 一方、高石団地へ登る長い階段を、おばあさんが猛暑の中で苦しそうに登っていた。一度に登れず、途中のベンチで一休みしている光景も見られる。高石団地の酒店(=右写真=)で、野菜や魚を購入しているお年寄りを見かける。
 バス停の前の町内会の案内版すべてを使って、子どもたちの山ゆり号の絵が掲示して、山ゆり号を宣伝している所も見かけた。初めはなかったポケットサイズ時刻表もバス停に用意された。

 実際に3ヶ月間運行されるようになって、ようやく山ゆり号が地域で少しずつ知られるようになってきたようだ。
 市初のコミニティバスの運行は実現できるだろうか。
 
 現在、川崎市は「川崎市基本環境基本計画」の改定作業を促進している。市民説明会の資料の第7章「主体別環境配慮指針(市民)」の中で、「市民の責務」を規定し、「移動の際、できるだけ自家用車の使用を控え公共交通機関や自転車等を利用するよう心がける」を配慮事項として掲げている。

 山ゆり号の本格運行は、この「市民の責務」を支援する結果となろう。

                                                             2010.9文責・写真:高橋 
山ゆり号関係チラシ(PDF)制作井坂:5頁のニュース1の横長の写真は、当会が市まちづくり局交通政策室に提供したもの。
☆川崎議会での一般質問平成22年6月22日 コミュニティ交通  
○勝又光江議員の質問
  小田急線百合ヶ岡駅と麻生区高石地区を結ぶコミニティバス「山ゆり号」の3回目の試行運行が22年6月に開始された。本格運行への補助をも含め見解は。
○答弁
  今回の志向では地元の方が共に支え合う制度としてのサポート制度を導入しており、高齢者などの外出に効果が期待される。試行後は安全性や割引制度の効果を検証するとともに本格運行の実現を検討するが、市も車両購入費や高齢者への割引補助など適切な支援、検討を行いたい。

              平成22年9月1日付「議会かわさき」より
ひと事:市の言う「適切な支援」とは何であろうか?
☆川崎市麻生区高石地区における乗合タクシーの運行実験と試験運行の歴史
☆経緯 1998年から水暮町会が活動開始。2003年12月、市民の会、川崎市コミニュニティバス運行実験説明会開催。2004年1月15日から2月13日までの30日間、まちづくり局主導で、百合ヶ丘駅を起終点に5.7qを40分間隔で多摩区南生田を循環する運行実験を実施した。・・・2004年11月「麻生区コミニティバス協議会」設立。行政(道路管理者、警察など)から、行議会計画案の小型バスついて、運行は困難という見解が出され、乗合タクシー方式での運行実験が了承された。
●2006年の運行実験 2007年2月13日〜3月14日
 読売ランド駅前から百合ヶ駅間の片道約4qを毎日約20分間隔で乗客定員6名の車両2台で運行。利用者数は一日168人、1本あたり約3.0人。運賃大人200円、小児100円。収入は月額約99万円。運行経費約225万円、月額約126万円の赤字となる。
●第1回、試行運行 2007年12月〜2008年1月
 老人ホーム「桜湯園」から読売ランド前駅経由百合ヶ丘片道約4q。運行日を月から土曜日とした。約25分間隔往復合計42本で、2台体制。12月と1月の運賃は大人200円、小児200円だったが、2月のみアンケート結果から大人300円、小児200円とし、1日乗車券500円とした。利用人数125人/日。運賃収入月額約83万円。運行経費約140万円。月額約57万円の赤字。
 運賃外収入を検討し、2月に1社1万円/月を得る。車両6名より大型化を検討。
●第2回、試行運行 2010年6月1日〜8月31日今回
 運行者車両を大型化して定員を8〜9名程度とし、運行日を月から金曜とする。アンケート結果よりの試算では、推定利用者数約73日/日、1本あたり約3人。推定運賃収入月額約41万円、推定運行経費約41万円/月、推計収支月額約22万円の赤字を見込んでいる。
☆麻生区高石地区の乗合タクシー「本格運行へ前進」 試行で採算性クリア・・・・2010年10月6日付「神奈川新聞」
 本格運行へ大きく前進―。新たな交通手段の確保に向けて、川崎市麻生区高石地区周辺で行われた乗り合いタクシー「山ゆり号」(8人乗り)の試行運行の結果がまとまった。1日の平均利用者は88人。割引制度や広告料収入などが後押しし、大きな課題だった採算性はクリアした様子。市は来年度の早い時期での本格運行へ向けて、支援策などを検討している。
 細く急な坂道が多く、路線バスが通れない同地区。高齢化が進む中、地元住民は乗り合いタクシーの導入に期待を寄せている。過去の試行運行などではいずれも採算が取れず、本格運行は見送られてきた。
 今回、周辺住民で構成する「麻生区コミュニティーバス協議会」(碓井勝次会長)は6月から3カ月間、採算性を重視して試行運行を実施。「高石団地前」から小田急線「百合ケ丘駅」間の約3キロで、同区のタクシー会社「コスモ交通」が平日に1日12往復運行。高齢者や障害者が対象の割引きや、登録すると50円の割引きを受けられる「サポーター割引制度」も導入して調査した。
 その結果、期間中の利用人数は計5741人で、1日の平均利用者は6月が72人、7月は90人、8月は102人に上り、3カ月間の平均は88人に達した。1カ月平均の運賃収入は約51万円で、本格運行した際に年間6千円の登録料を支払うことになっているサポーター割引制度や車体広告を入れると、必要経費とされる月額60万円を超えた。

 同協議会副会長の岡野幸雄さんは「住民にとって、乗り合いタクシーは生活に欠かせない存在。本格運行が見えてきたことは、とてもうれしい」と話している。市は今後、高齢者などの割引分について補助する制度構築などを進めていく。 
☆宮前区野川南台地区は本格運行か?
 川崎市では、県営野川南台団地自治会が中心となってコミニテイバスを自主運行を行っている=右写真。
 2005 年2 月に同自治会は「南台コミュニティ交通導入推進協議会」を設立し、コミュニティ交通の導入に向けて、行政と協働しながら取り組みを進めた。      2008年7月18日から、県営野川南台団地自治会が自治会員のみのために無料で運行を開始。月・水・金の週三回、午前9時台から15時台、ボランティアの運転手が定員9名のワゴン車を運行している。「道路運行法の許可を要しない運行」の形態をとっている。車両は川崎市の補助を受けて、自治会が1台購入。南台団地が県営住宅のため神奈川県住宅営繕事務所長から「行政財産目的外使用許可」を得て、団地の集会所前に駐車している。
 このコミニティバス“みらい”は、道路運送法の許可を得ていない車両のため、公道上で乗降ができないことになっている。「乗降場所は民有地としなければならず、適当な場所を見つけて地権者の理解を得ることが大変だった」そうだ。
 川崎市まづくり局計画課の資料(川崎市コミュニティ交通導入に向けた各地区の取組状況について」によれば、この「宮前区野川南台地区」の運行を本格運行と位置づけている。 (写真提供:当会会員井坂)
野川南台コミュニティバス「みらい」運行概要(PDFファイル)資料提供:当会の姉妹団体「持続可能な地域交通を考える会
☆コミニティバスには、運賃原価主義でなく、社会的便益価値が重要だ。
 当会会員で鉄道問題に詳しい橋本道哉さんは、「費用便益(B/C)分析は事業の経済的効率を評価する手法でしかない」と強調し、「事業が提供する社会的な便益の価値(Benefit)」が重要で、「それは事業の利潤ないし収入とは根本的に異なり、国民経済に与える便益だ」と訴えている。 
 「交通プロジェクトの便益は、
 1.運転経費が減少する
 2.経済開発を刺激する
 3.人および物の両方の時間が節約される
 4.事故および事故による被害の減少する
 5.快適性と利便性が増加する。 
 さらに新しい項目として 6.CO2の発生が抑制される、等がある。
 数値化できるものとして1項、3項、4項および6項であるが、3項の時間節約だけで計算している場合が多い」。
藤井聡・谷口綾子著「モビリティ・マネジメント入門」

 我が国の二酸化炭素排(CO2)出量のうち運輸部門は19.1%、その内自家用乗用車の割合は48.2%(2007年度統計)だ。全排出量の約9.2%が自家用乗用車。CO2削減にはクルマの利用を減らすことが欠かせない。ではどうクルマ社会を抑制していくか? 

「クルマ利用をできるだけ控えたり、公共交通をできるだけ使うような“意識”を、行政の施策を通じて醸成していくなど、本当できるのだろうか」という疑問に答えるのが、本書だ。

『モビリティ・マネジメントとは、当該の地域や都市を、「過度に自動車に頼る状態」から「公共交通や徒歩などを含めた多様な交通手段を適度に(=かしこく)利用する状態」へ少しずつ変えていく」一連の取組を意味するもの」

「特にオーストラリアや英国では、日本より一足早く、数万世帯、数十万世帯を対象とした大規模なコミュニケーション施策が展開され、大きな成果が上げられている」西オートラリア州政府は2000年から10年間で64万人を対象とする計画を実施。総経費は約30億円。これは「4車線の道路をわずか7q整備する費用に等しい」。この1ドルの投資によって、ガソリン、CO2、旅行時間の削減という社会的便宜が約13ドル得られるという。

ロンドン交通局では06年に20年計画をまとめ、25年までに4割の公共交通容量を増強し、9%の自動車分担率を削減する数値目標を掲げた。その社会的便宜の試算額は約40兆円。ロンドン市の地球温暖化ガス削減目標値30%に対して、この施策によって、その22%削減が可能と想定されている。

オーストラリア州パースではこの施策に約20名のスタッフを配置した。まずハガキを郵送。電話によるアンケートを実施して、自転車で個別訪問して「公共交通のお試しチケット」など個人に合った情報グッズを手渡す。その結果、南バース市では自動車に依存した45%、6,000世帯が興味ありと分類された。本書ではこんな内外の実例を紹介している。

『モビリティ・マネジメントにおいて目指すべき社会は、「クルマが無い社会」ではなく、「かしこくクルマとつきあう社会」なのだ、という点を忘れてはならない』 
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